不動産営業の現場で最も多いのが「断られる」瞬間です。いくら準備をして臨んでも、お客様からの「結構です」「また考えます」という言葉は避けられません。私も新人時代、1日に50件以上の飛び込みをして、ほとんどが門前払い。数え切れないほどの「断り文句」を浴び続けてきました。しかし、そこで諦めず「切り返し方」を工夫することで、契約につながった経験が何度もあります。今回は、不動産営業マンが必ず直面する「断られたとき」の乗り越え方を、実体験を交えて解説します。
よくある断り文句と心理的背景
まずは、現場でよく聞く「断り文句」とその背景を整理します。断られる言葉には必ず理由があります。それを理解できると、自然な切り返しができるようになります。
- 「興味ありません」→ 情報を受け取る準備がない、または営業トークへの警戒心。
- 「今は忙しい」→ 興味がゼロではなく、時間を奪われたくない心理。
- 「もう決めています」→ 他社と比較しても無駄だと考えている。
- 「家族に相談します」→ 不安を家族の反対に置き換えているケースが多い。
- 「予算が合いません」→ 本当に資金的に難しい場合もあるが、多くは“納得できない”という意味。
断られたときの基本姿勢
切り返しをする前に大事なのは「断られたからといって落ち込まない」ことです。私自身、断られるたびに「自分が否定された」と感じ、メンタルを消耗していました。しかし、先輩に言われた「断り文句は防御反応であって、必ずしもNOではない」という言葉で意識が変わりました。
大切なのは「真正面から反論しない」こと。相手の言葉を受け止めた上で、自然に会話を続ける工夫をすれば、相手は心を開いてくれます。
実体験:門前払いから商談に繋がった例
新人時代、私はよく「興味ありません」と言われていました。ある日、ある会社の受付で同じ言葉を言われたとき、私は咄嗟に「実は地域の最新相場データをまとめた資料をお持ちしたんですが、1分だけでも目を通していただけませんか?」と伝えました。すると相手は少し考え、「じゃあ資料だけ置いていって」と受け取ってくれたのです。その後、電話でフォローをしたところ、担当者と商談の場を持つことができ、最終的に成約につながりました。
切り返しの具体テクニック① 共感をベースにする
相手が断ったとき、すぐにメリットを押し返すのではなく、まずは共感を示します。
例:「ごもっともです。私も最初に同じ話を聞いたときはそう思いました。」
共感を見せることで相手の警戒心が緩み、その後に情報提供がしやすくなります。
切り返しの具体テクニック② 質問で会話を続ける
「結構です」と言われたら終わり、ではなく「ちなみに…」と質問を挟むと、会話が復活します。
例:「結構です」→「ちなみに、今のお住まいで一番ご不満に感じている点はありますか?」
質問を通じて相手に話してもらえれば、その内容から提案の糸口が見つかります。
切り返しの具体テクニック③ 情報提供に切り替える
断られた直後に「それなら資料だけでも…」と情報提供に切り替えるのも効果的です。相手は「営業されたくない」のであって、「情報を得たくない」わけではありません。資料を残すことで、後日のフォローにつながります。
例:「分かりました。では、最近の不動産相場をまとめた簡単な資料だけ置いていきます。ご参考になれば幸いです。」
切り返しの具体テクニック④ 選択肢を提示する
「はい/いいえ」で終わる提案は断られやすいです。そこで「選択肢」を提示することで会話が続きます。
例:「資料だけご覧いただくか、5分だけ口頭でご説明するか、どちらがよろしいでしょうか?」
二択を提示することで「断る」以外の選択肢を与えることができます。
実体験:切り返しが成約に繋がった例
あるお客様に飛び込みで訪問した際、「結構です」とドアを閉められそうになりました。そこで私は「地域の地価推移をまとめたものですが、資産運用を考える際に役立つと思います」と伝えました。すると相手は「地価推移?それなら見てもいい」と言い、結果的に30分の商談に発展。その後、2回目の訪問で契約に至りました。断りの一言を逆手にとって「価値ある情報」に変えられたのです。
断られたときのNG対応
逆にやってはいけない対応もあります。
- しつこく食い下がる:相手が「うんざり」するだけで逆効果。
- 反論する:「そうじゃありません」と否定する形は相手の反感を買います。
- 諦めて立ち去る:一瞬で終わり、再訪のチャンスも消えます。
NG対応を避けるだけでも、切り返しの効果は大きく変わります。
断りを切り返す流れ
- 断り文句を受け止める(否定しない)
- 共感を示す(気持ちに寄り添う)
- 質問または情報提供で会話を再開する
- 小さな「はい」を積み上げる
この流れを意識することで、断りから自然に次のステップにつなげられます。
明日からできる実践ステップ
- 「興味ありません」と言われたときの返しを3パターン用意しておく
- 「忙しい」と言われたときは、資料提供+フォローの約束を組み合わせる
- 断られる前提でアプローチし、切り返しを「準備された流れ」として扱う
まとめ
断られることは営業の宿命です。しかし、断られた瞬間を「終了」ではなく「会話の始まり」と捉えれば、結果は大きく変わります。共感、質問、情報提供、選択肢提示といった切り返しを駆使することで、断り文句は契約への扉に変わります。私自身、断られ続けた経験から学び、今では「断りの一言がチャンス」に思えるようになりました。営業マンとして数字を残すには、この考え方が不可欠です。
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