飛び込み営業は「数をこなせば成果が出る」とよく言われます。しかし、実際に現場に出ると、その言葉がいかに過酷かを思い知らされます。私自身、新人時代に1日50件以上の飛び込みを繰り返し、ほとんどが門前払いという経験を積んできました。精神的にも体力的にも消耗し、「このやり方では成果が出ない」と悩み続けたのです。
ところが、ただ闇雲に訪問するのではなく「効率的に動く方法」を学び、実践したことで、成果は劇的に変わりました。今回は、不動産営業マンが飛び込み営業を効率化するための具体的な方法を、私の実体験とともに紹介します。
飛び込み営業の現実と課題
飛び込み営業は、新規顧客開拓の手段として昔から活用されてきました。しかし現代では、顧客のニーズや生活スタイルが多様化し、単なる「量」の営業では通用しなくなっています。1日50件回っても成果ゼロというのは珍しくなく、むしろ「効率の悪い営業法」とさえ言われることもあります。
しかし、完全に無駄かといえばそうではありません。飛び込み営業は「短期間で数多くの接触ができる」「競合がアプローチしていない層に出会える」という強みも持っています。問題は効率化です。無計画に回れば疲弊しますが、戦略的に動けば数字につながります。
効率化の第一歩:準備段階が9割
飛び込み営業の効率化は、現場に出る前の準備でほぼ決まります。私も新人時代は「とりあえず多く回れば成果が出る」と思い、無計画に訪問していました。その結果、同じ地域を何度も回って時間を無駄にしたり、興味のない層にばかりアプローチして成果が出なかったりしました。
そこで取り入れたのが「事前準備に時間をかける」という考え方です。準備を徹底することで、訪問数を減らしても契約数が増えるという逆転現象が起きました。
効率的なエリア選定のコツ
まずはエリアを絞ることが重要です。漠然と広い地域を回るのではなく、ターゲットが集中しているエリアに絞り込みます。例えば、不動産投資用マンションの営業であれば、金融機関や大企業が多く集まるオフィス街を狙うのが有効です。逆に、郊外の住宅地ばかり回っても、ニーズが合わず空振りに終わることが多いのです。
私が実践したのは「午前中は法人エリア、午後は住宅街」と時間帯によってエリアを分ける方法です。これにより、午前は出社前の企業担当者、午後は在宅中の個人に効率よく接触できました。
ターゲットリストの作り方
次に重要なのがターゲットリストの作成です。私は最初、地図アプリにピンを打ちながら「とにかく訪問」というスタイルでしたが、これは効率が悪すぎました。そこで、業界や職種、企業規模などを事前に調べ、訪問対象を明確にしました。
具体的には以下のように分類しました:
- 資産形成に関心が高そうな層(30〜50代のサラリーマン、経営者)
- 将来の住宅購入を検討していそうな層(新婚世帯、子育て世帯)
- 不動産投資に触れる機会が多い層(金融業界、士業)
このようにリストを整理することで、ただの「飛び込み」から「狙い撃ち」の訪問に変わり、アポイント獲得率が大幅に上がりました。
事前情報収集の重要性
飛び込み営業でも、事前に相手の情報を把握しているかどうかで成果が変わります。私は訪問前に、企業のホームページや地域情報誌を必ずチェックするようにしました。たとえば「御社が最近新しい拠点を出されたと伺いました」という一言があるだけで、「この人は調べてきている」と印象が変わるのです。
こうした情報収集を習慣にすると、会話の質が上がり、断られる確率も減っていきました。
効率的な訪問時間の選び方
飛び込み営業では「時間帯」が成果を左右します。私が失敗していた頃は、どの時間でも無差別に訪問していました。結果は「忙しいから無理」という断りばかり。そこで気づいたのは、相手の生活リズムや業務時間に合わせることの重要性です。
- 法人訪問:午前10時〜11時は比較的アポイントが取りやすい。
- 個人宅訪問:夕方〜夜にかけて帰宅直後が狙い目。
- 土日営業:平日接触できない層に出会える貴重な時間。
この工夫を取り入れるだけで、無駄足が大幅に減り、同じ訪問数でも会話に繋がる確率が倍以上になりました。
アプローチトークの効率化
飛び込み営業では「最初の一言」で結果が決まります。以前の私は「少しお時間いただけませんか?」とお願いするスタイルでしたが、これは警戒されやすい言葉でした。そこで「地域の不動産動向をお知らせに伺いました」と切り口を変えたところ、相手の反応が大きく改善しました。
また、相手が立ち止まった瞬間に「安心材料」を添えることも大切です。「無理に売り込むつもりはありません」「ご参考になれば幸いです」と伝えるだけで、会話のハードルが下がります。
効率化された一日のスケジュール例
私が実践していた1日の動きは以下の通りです。
- 午前中(10時〜12時):法人エリアを重点的に訪問
- 午後(13時〜16時):住宅街で個人宅を訪問
- 夕方以降(17時〜19時):帰宅直後の層をターゲットに再訪問
- 夜(20時):訪問結果を記録・分析し、翌日の計画を立てる
このサイクルを繰り返すことで「訪問→反応→改善」の流れが生まれ、成果が安定していきました。
実体験:50件訪問で成果ゼロの日
ある日、私は1日で50件以上の訪問をしました。しかし、ほとんどが「忙しい」と断られ、成果はゼロ。振り返ってみると、時間帯も無計画、アプローチトークも単調で、ただ数を稼いだだけの日でした。疲労感だけが残り、心が折れそうになったのを今でも覚えています。
実体験:効率化を取り入れて成果が出た日
その反省を活かし、次の日はエリアを午前と午後で分け、アプローチトークも工夫しました。訪問数は30件に減ったものの、アポイントは3件獲得。結果的にその週に1件の契約が成立しました。「数より質」を意識した瞬間、営業の結果が劇的に変わったのです。
断られにくい工夫と切り返しの応用
飛び込み営業では「断られること」が当たり前です。問題は、そこで終わらせるか、次につなげられるか。私は「共感」と「情報提供」を組み合わせることで、断られにくくする工夫を取り入れました。
例えば「興味ありません」と言われたとき、「そうですよね、皆さん最初はそうおっしゃるんです。ただ、地域の地価推移だけは知っておいて損はないと思います」と返すと、相手が資料を受け取ってくれる可能性が高まります。
また、雑談をうまく使うことも有効です。天気や地域の話題などから入ることで、相手の緊張を解き、本題につなげやすくなります。私は「最近このエリアに新しいスーパーができましたよね」と話題を出し、そこから「地域の発展と不動産価値の関係」に話を広げることで、自然に商談へと移行した経験があります。
成果を出す営業マンの習慣
効率化された飛び込み営業を実現するためには、日々の習慣づくりが欠かせません。私が特に意識していた習慣を紹介します。
- 訪問記録の徹底:1件ごとの反応をメモし、翌日の訪問に活かす。
- トークの改善:断られた理由を振り返り、トーク内容を日々修正する。
- 数値目標の設定:「訪問数」ではなく「会話数」を目標にする。
これらを繰り返すことで、自分なりの「勝ちパターン」が見つかります。飛び込み営業は辛い仕事ですが、この習慣を積み重ねることで徐々に楽しさを感じられるようになりました。
飛び込み営業を効率化するマインドセット
最後に、効率化を続けるために必要なマインドセットをお伝えします。
- 「断られて当たり前」と考える:断られることを恐れると行動が止まる。
- 「数より質」を意識する:訪問数よりも会話の深さを重視する。
- 「小さな成功を積み重ねる」:笑顔で挨拶できた、資料を受け取ってもらえたなど、小さな成果を認める。
私自身、この考え方を持つようになってから、営業が楽になり、成果も安定するようになりました。
まとめ
飛び込み営業は「効率が悪い」と言われがちですが、工夫次第で十分成果を上げられる手法です。エリア選定やターゲットリスト作成、訪問時間の工夫、アプローチトークの改善、断られにくい切り返し、そして日々の習慣。このすべてを意識すれば、ただ数をこなす営業から「成果を出す営業」へと変わります。
私が数え切れない失敗から学んだことは、飛び込み営業は「量をこなす仕事」ではなく「戦略と工夫で磨き上げる仕事」だということです。この記事が、同じように日々奮闘している営業マンの力になれば幸いです。
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